絵本立体化計画、始動!
「ちいさいおうち」


 四季豊かな片田舎に建つ小さな家。アメリカ建国の歴史とともにあるのではとすら思えるほどの長い間、彼は静かに、幸せに暮らしてきていた。
 ところが、目の前に一本の幹線道路が開通したことをきっかけに家の周りが急激に市街地化都市化をはじめる。自動車、都市鉄道、地下鉄が通り、脇の建物は数十階建ての高層ビルに。小さな家はもう住む人もいない廃屋と化し、豊かな自然など遠い過去のこととなってしまった。
 しかし、かつてのその家の持ち主の子孫が改めて家を買い取り、家を基礎ごと移動、自然溢れる片田舎へと引っ越し、小さな家はそこで余生を送ることになったのだった。

1 そもそものはじまり

 
子供の頃慣れ親しんだ絵本たち。「きかんしゃやえもん」「ちびくろさんぼ」「ひとまねこざる」…さまざまな本を見ましたが、この「ちいさいおうち」は、その設定の特異さが際立つ、特にお気に入りの一冊でした。

 主人公は、一軒の家です。
 モノの擬人化による絵本は、「きかんしゃやえもん」などにもみられる手法ですが、なにしろ家なので、全く動き回りません。そのかわり、ページをめくるごとに風景や時代が変化していきます。
 最初は一面のの畑や牧場だったところが、最後には不夜城の大都会へと変貌していき、主人公はビルの谷間でいつが昼でいつが夜なのかすらわからない窮屈な気分を味わいます。
 すなわち、定点観測によって、「季節」「年月」の移り変わりや、それを凌駕せんとする現代文明を問う作品なわけです。

 もちろん幼少の自分にとっては、そんなテーマなどどうでもよく、発展する街や、ただの家なのに、その表情が幸せなものからすさんだものにだんだんと変わっていく描写に惹かれたのです。

 この、「定点で変化する情景」という描写法が、組み立て玩具であるレゴブロックと合うのではないかと思い始めたのが4年ほど前です。当時すでに、映画の主要シーンをレゴブロックを使って再現する人などがおり、このような挑戦について、自分なりに慣れ親しんだ題材を模索していたのでした。
 そして、他の誰かがやらないうちにツバだけつけちゃえ!と、とりあえずウェブサイト上で「作ります宣言」をしたところまでが、これまでの状況でした。

2 転機

 
2005年のはじめ、私はテレビ東京系「TVチャンピオン(レゴ王)」に出場しました。残念ながら、決勝進出すらできませんでしたが、過去の作品について丁寧に紹介して頂いたおかげか、放映後にいくつかの「レゴモデル製作」の引き合いがありました。
 そのひとつとして頂いたのが、愛知県岡崎市の展示施設での10月からの企画に向けてレゴモデルを作るという事案でした。

 題材はなんでも良かったのですが、展示スペースの大きさや概要を知るにつけ、「ちいさいおうち」をやるしかないしかない!と確信するに至ったわけです。

3 試作

 
そんなわけで、実際に作る大きさから割り出すかっこうで、家のだいたいのサイズ決めを行いました。ここで重要な決定となったのは、全景用とカットイン用の近景用の2種のモデルを作る、という考えです。
 一般的には、レゴで街を作る場合、標準となるスケールはミニフィグ用の大きさとなります。しかし、この絵本の内容を再現する場合、これだと最低でも畳三畳分の大きさで作らないと再現できません。しかし、個人の趣味としてライフワーク的にやっていくならともかく、提出期限の切られた展示作品ですから、そんな悠長なことはやっていられません。そこで、全体を見せるときはスケールを小さくしたモデルを作ることにしました。
 全景用、近景用ともに、緑色のプレート4枚分程度のサイズを基本にしています。
 それでも全部で10のシーンを作っていますから、5月から始めて9月いっぱいで、2週間に1シーンのペースを順守しないと間に合わないわけです。

4 ついに公開!

 
そんな紆余曲折を経て、ほとんど苦行のような半年が過ぎ、ようやく完成にこぎつけたのが、この作品です!
 当サイト内解説
 
ブリックシェルフ
 
展示は、私の作品単独ではなく、他のさまざまな「組み立て玩具」とならんで紹介するような形でしたが、会期中一日の平均入場者数800人以上という好評のうちに終えることができました。このような機会を得たことに感謝感激です。

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